ドキドキするようなことがあると世界が美しく見える癖がある。
普通に建っているビルも、休みなく動いている信号も、颯爽と走っていく車も
目に入ってくるもの全てが綺麗で、どこに向かっているのかさえどうでも
よくなってしまう。
草の上に寝転がって夜空を見てみたら星が少しだけ見えた。
曇り空の中の星だったのでキラキラしているわけじゃないけれど、
ドキドキしているせいか、やっぱりまた綺麗に見えた。
目の前は池のようなものがあり、それはわたしには白い水のように見えたけれど
一緒にいる人にはただの汚い水にしか見えないと言っていた。
夜露を足元に感じながら歩いてみれば、普段だったら濡れたくないと思っても
全然平気に思えるし、広い公園もどこか遠い森にいるような気分にさせられる。
あの状態は、一体何なんだろう。
考えれば考えるほど分からない。
もしかして夢だったのかと思い、部屋を見渡すと、草の上に敷いて湿った布と
そこについてきた葉っぱのおまけがある。
やっぱりあのドキドキは夢じゃなかったんだと思う。
限りある夜のチカラ。
この癖はきっと直らない。