とっても好きな人がいて、その人は今まで私がしてきたかったこと
全部を叶えてくれそうなぐらい、うんと
優しくて頼りがいがあって、彼を見ていると笑顔になれた。
いつも以上に元気になれた。
彼はとても忙しく、仕事を3つも4つも抱えていて
常に睡眠不足だった。
それなのに「会いたい」と言って私のために時間を割いてくれた。
だけどやっぱり彼は眠そうで、それを見ているのが可哀想で
いつの間にか会う時間の大半は、眠る彼の横にいるようになった。
大好きな人と一緒にいれるのは幸せなはずなのに、何でこんなに
淋しいんだろう、お願いだから目を開けて私と話して、少しでいいから
今度はどこへ行こうとか、週末はあのお店へ行ってみようか、とか
今日あったこんなことを聞いて、お願いちょっとでいいから相手をして、
と感じるのと同時に、一生懸命働いているんだから眠って欲しい、
出来れば1分でも長く眠って欲しい、そしてまた働いて充実した日を
過ごして欲しい、もう両方の気持ちでいっぱいでどうしていいか分からずに、
この場を去りたいのだけど、目を覚まして私がいなかったらきっと
彼が淋しがる、いいや私が少しでも一緒にいたい、そんな想いで
何にも出来ないことが何回か続いた。
それまで我慢ばかりの恋愛をしてきた私にとっては
彼は本当に、天使はよく知らないけれど、天使のような人で、
それまでの辛いことは彼と出会うためにしてきたんだろう、とまで
思えるぐらい最高な、私にはもったいないぐらいの人だった。
悲しんでいる私を見て「スケジュールが詰まり過ぎないように
ちゃんと考えて改善するから、ごめんね」と言った。
何回もごめんねと言った。
辛そうだった。
本当ならわたしが「ごめんね」と言わなきゃいけなかった。
私の心が悲しまなければ、彼はそんなことを言わなくて済んだだろうし、
仕事も頑張れただろうし、きっともっと楽に付き合えたはずだったろうに、
どうしてもっと自由にしてあげれないのかな、わたしはこんな女じゃ
ないじゃん、寝ようが出かけようがあなたは好きにすればいいじゃない?
っていうタイプじゃん、今までそうやって生きてきたのに、何でこんなに
何でも欲しくなっちゃうんだろう、彼も欲しいし、彼の時間も欲しいし、
全然与えられなくなって求めてばかり。
そんなの愛じゃない。
自分で自分を嫌いになりそうだったので勇気を出して
「しばらく会わないようにしようか。そうした方がいいと思う」と言うと
彼はまるで何にも聞こえなかったかのように私を抱きしめた。
仕事に出かける時間まであと20分あったので
「20分後に起こすから寝て」と言うと「分かった。ありがとう」と
言って目を閉じた。
彼が寝返りを打ち私は背中にくっついた。
彼が手を取って自分の方に引き寄せた。その手はとても温かく、
こうしているだけで幸せなのに、未だ悲しみたがる私の心は一体何なんだと
考えると苦しくて涙が止まらなかった。
会わないことなんて無理なのに会うのを止めようだなんて馬鹿げてる、
もうどこまで悪い彼女なんだろうと思っていると黙ったまま彼が更に手を
強く握り、
文句一つも言わずに私を喜ばせようと常に努力するなんて、こんなわたしの手なんか
握られる価値もないのに、何でこんなに愛してくれるんだろう、
どこまで優しい人なんだろう、そう思うと、もう彼が愛しくて、同時に
不憫で仕方なかった。
今でもその日を思い出すと声が出るまで泣いてしまいます。